清算人の申立てを行い、不動産売買を実現した事案
事案の概要
ある区域の開発を行っている不動産業者からのご依頼案件です。
不動産業者が不動産の所有者を調査したところ、ある土地の所有者がすでに事業停止している法人(株式会社)であることがわかりました。当該法人は、事業を停止しているものの、破産申立て等は行われておらず、いわゆる休眠会社の状態でした。
不動産業者は、その法人の代表取締役の親族に対して連絡がとれたのですが、代表本人はすでに亡くなっていました。
弁護士が行った業務
代表者の所在が不明な場合等に、当該法人に代わって契約を行う立場を裁判所が選任することができます。「清算人」という業務です。裁判所が自動で選んでくれるわけではなく、利害関係人等による申立てが必要となります。
当事務所は、法人の清算人を選任し、この清算人と売買契約をすることを考えました。
しかし、この手続きにはハードルがあります。一つは、株主が不明だったという点です。
売買代金額によりますが、売買代金が高額になると、当該法人の株主に対して配当を実施しなければなりません。しかし、非上場の全く知らない法人の株主の所在を調べることは困難を極めます。本件でも全く手がかりがありませんでした。
過去に、差押等がされていることから、当該債権者に連絡をし、情報提供を依頼しました。しかし、その手続きもかなり昔であるため、すでに資料が廃棄されていたり、当方が必要な情報を持ち合わせていなかったりということで、情報収集は難航しました。
購入希望の不動産の売買代金を調べるために固定資産評価額を調べたところ、かなり低い金額で購入ができることがわかりました。また、偶然にも、近隣の不動産が競売にかけられており、その調査報告書等を確認することもできました。
このような事情から、売買代金の全額を清算人の報酬に充てることができ、株主への配当を実施しない方法で不動産売買を完結させることができると考えました。当事務所は裁判所に事情を説明し、上記の方法を提案し、理解を得ました。
その上で、清算人の申立てを行い、当事務所の依頼者は当初の予定より低い金額で、対象の不動産を購入することができました。
担当弁護士の所感
清算人をスポットで選任するという運用があります。代表取締役が死亡し、事業を停止しているような会社を相手に訴訟提起等の何らかの法的手続きをとる場合に、このような清算人の申立てを行います。
本件では事情が不明な点が多かったものの、清算人の申立てまでこぎつけ、無事契約することができ、大変良かったです(担当弁護士 五十嵐勇)。
掲載日2024年4月25日
五十嵐 勇
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