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相続人が多くてどうすればいいかわからない!相続人が多数いる場合の遺産分割の進め方について

はじめに

相続が発生し、相続人が多数人いる場合があります。弁護士の経験上、相続人が5、6人程度であれば一般的によくあるケースといえます。しかし、例えば、相続人が10人以上いるケースもあり、当事務所でも相続人が40人以上いる案件を対応したこともあります。
このような相続人が多数いる場合、どのような進め方をした方がよいのでしょうか。弁護士が解説します。

 

相続人が多数人になる場合の問題点

①遠方にいる人がいて、話し合いをまとめるのが困難

相続人の人数が多いと一緒に集まって話し合うということが現実的には不可能です。相続人全員が近所に住んでいればよいのですが、そのようなケースは極めて稀でしょう。多くの場合は、市外や県外に住んでいる人がいるので、全員が一緒に集まることはできません。また、手紙や電話を使うとしても、相続人それぞれが異なる意見をもっていることが多く、話し合いを進めることは容易ではありません。

②相続人全員が参加しなければならないため、一人でも欠くと遺産分割協議が無効になる

相続人の人数にかかわらず、遺産分割は相続人全員が参加しなければならず、一人でも参加していなければその遺産分割は無効となります。
かりに、相続人の一部を欠いた遺産分割協議書を作成したとしても、不動産の名義変更や預貯金の解約手続きを行うときに、法務局や金融機関も戸籍等の原本を確認して相続人をチェックしますので、その段階で受付されなくなってしまいます。
そのため、相続人が大勢いる場合であっても、相続人全員が遺産分割に参加しなければならないのです。

③認知症などで判断能力が低下し、有効な意思表示ができない相続人がいる

相続人が多数人いる場合、相続人の中には高齢のため認知症等を発症しており、判断能力が低下している方がいらっしゃる場合があります。症状の内容や程度にもよりますが、かりにご自身で有効な意思表示ができない状態である場合、そもそも連絡がとれない状態でしょうし、かりにそのような相続人が遺産分割協議書に署名押印をしても無効であり、遺産分割協議全体が無効となってしまうリスクがあります。
このような場合の対処方法としては、判断能力が低下した相続人に成年後見人を選任し、その成年後見人がご本人に代わって遺産分割協議に参加するという方法が考えられます。
しかし、成年後見人の選任には時間と手間がかかりますし、申立のために医師から診断書を作成してもらったり、保有している財産内容を家庭裁判所に提出したりするなど、手続きはとても煩雑です。
加えて、成年後見人は、ひとたび選任されると、ご本人様が死亡するまで原則として成年後見人を辞めることができないため、ご家族のご負担になる場合もあります。

④未成年の相続人がいる場合がある

相続人に未成年がいる場合もあります。未成年の場合、有効な法律行為を行うことはできませんので、親権者が未成年子に代わって遺産分割協議に参加することになります。
しかし、その親権者も相続人である場合は、未成年の子に代わって遺産分割に参加することができません。なぜなら、親権者の利益と未成年子の利益が相反する状態となるからです(「利益相反」といいます)。
この場合、裁判所に申立てをして「特別代理人」を選任してもらい、親権者以外の第三者が特別代理人に就任する必要があります。この特別代理人が遺産分割協議に参加することになります。

⑤行方不明、連絡がとれない相続人がいる

相続人の中に、行方不明であったり、連絡がとれない相続人がいたりする場合があります。実務上、意外とこのようなケースを担当することがあります。
相続人調査を行う際に、相続人の現在の住所を調べるため、戸籍の附票や住民票を取得します。多くの場合、この住民票の住所にお住まいですが、中には、住民票を異動しておらず、現住所と一致しない場合があります。
また、何らかの事情により行方不明で、過去に使用していた電話番号に電話をしてもつながらないなど、音信不通になっている方もいます。
このような事情があったとしても、遺産分割から排除してよいということにならず、原則どおり、遺産分割に参加してもらわなければなりません。
そのため、行方不明である相続人の代理人として、「不在者財産管理人」を選任する必要があります。この手続きは、家庭裁判所に対して、行方不明であることを調査して、その資料を提出しなければなりません。不在であることを調査するのは、一般の方にとってはとても困難な作業です。

⑥相続人間の確執や不仲、協力してくれない相続人がいる

相続人が多くなると、相続人間で確執や不仲があったり、様々な理由から相続手続きに協力してくれない相続人がいる場合があります。中には、法的根拠のない過大な主張をしてきたり、感情的な主張をしてくる場合もあります。
こういった相続人がいると、解決まで相当な時間がかかってしまいます。

 

遺産分割を放置すると過料が科される場合があります

遺産分割に期限はありませんが、相続財産に不動産が含まれている場合、その不動産の相続登記が義務化されたため、相続のときから3年以内に相続登記をしなければなりません。この義務を怠ると過料という罰則を科される場合があります。

 

なぜ相続人が多数人になるのか?

それでは、なぜ相続人が数十人など多数になってしまうのでしょうか。以下の二つの事情が考えられます。

①被相続人の兄弟姉妹や甥、姪が相続人である場合

日本の合計特殊出生率は1947年で4.54であり、70歳以上の世代は兄弟姉妹が多くいた時代といえます(出典:https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003411595 )。
そして、令和4年の平均寿命が、男性で81.05歳、女性で87.09歳と、そのような兄弟姉妹が多くいらっしゃる世代の方が現在平均寿命の年齢に該当します(出典:https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life22/dl/life22-15.pdf )。
被相続人に子や直系尊属(父母、祖父母)がいない場合、第3順位である兄弟姉妹が法定相続人となるところ、兄弟姉妹が多いご家庭の場合は、相続人が多数になります。
そして、その法定相続人も被相続人と同世代あるいは年上であることから、すでに亡くなっている場合があり、この場合代襲相続といってその子(被相続人からみて甥・姪)にあたる方が相続人となります。代襲相続人が複数人いる場合もあります。
こういった事情があると、相続人が多数人になる場合があるのです。

②数次相続が発生している場合

被相続人の先代が亡くなったときに遺産分割協議が行われておらず、遺産の名義が先代のままになっている場合があります。この場合、先代の相続(一次相続)と今回の被相続人の相続(二次相続)とを解決しなければなりません。
複数の相続が重なっているだけでなく、例えば、一次相続の相続人がすでに亡くなっている場合は、そのさらに相続人が権利を承継しますから、その承継した方と遺産分割をしなければなりません。
このような事情があると、相続人が多数になるのです。

 

相続手続きの進め方

このように相続人が多数人いる場合、どのような手順で相続問題を解決すればよいのか説明します。

①相続人調査、相続財産調査を行う

まず、戸籍等を取得して、相続人調査をすることをお勧めします。
よく、「相続人は誰々がなる」などと推測でお話される方がいらっしゃいますが、実は戸籍等を調べると相続人が全くことなる場合もあります。中には、離婚歴があってその前妻(前夫)との間に子がいたりすることもあるのです。
そのため、まずは被相続人の相続関係について、戸籍等を取得して正確な情報を得ることが重要です。
そして、その相続人の情報に基づいて、被相続人の相続財産を調査しましょう。なぜなら、被相続人の財産内容を正確に把握しなければ、今後の方針を定めることができないためです。
例えば、被相続人の名義だと思っていた実家(土地・建物)の名義を調べたら、実は全く別人の名義であるとか、被相続人には借金があるといった、予想していないケースがあるのです。

②相続放棄をするか、遺産分割協議をするかを決める

相続人調査や相続財産調査を行ったら、相続放棄をするか、それとも相続財産の承継を希望するのかを決めましょう。
被相続人に借金などの債務が多い場合、あえて相続財産を承継しない判断も賢明です。一度相続を承認してしまうと、後から放棄することができなくなってしまいますから、慎重に判断しましょう。

相続人調査、相続財産調査を弁護士に依頼する場合の費用はこちら

③相続人に対して書面を送る

相続財産の承継を希望する場合、他の相続人と遺産分割協議をしなければなりません。遺産をどのように分配するかなど、ご自身の希望や方針を決めたら、他の相続人に対して提案をしましょう。
この場合、相続人全員に対して電話で話をするというのは大変ですし、いきなり電話しても警戒されてしまいます。そもそも相続人の電話番号を知らないことも多いでしょう。そのため、書面を郵送することが無難です。
書面でご自身の考えなどをまとめて、遺産分割協議への協力を呼びかけ、全員がそれに応じるようであれば、「遺産分割協議証明書」を使うことをお勧めします。これは、「相続人全員でこのような遺産分割協議が成立したこと証明します」ということが記載されていて、各相続人に署名押印してもらいます。一つの書面に全員が署名押印するということが現実的ではないからです。「遺産分割協議証明書」であっても、全員が署名押印すれば、法律的には遺産分割が有効に成立したことになります。
内容さえ問題なければ、遺産分割成立後に被相続人の相続財産を名義変更する際に、法務局や金融機関等もきちんと受け付けてくれます。
また、相続分の譲渡を受けるという方法をとる場合もあります。相続分の譲渡は、有償でも無償でも行うことができます。この場合、「相続分の全部を譲渡する」等と記載された「相続分譲渡証明書」に署名押印してもらう必要があります。

④調停の申立てをする

お話合いや書面のやり取りでは遺産分割が成立しない場合、裁判所の手続きの利用を検討します。
遺産分割調停は、相手方となる他の相続人の住所地を管轄する裁判所に申立をすることになります。例えば、被相続人の最後の住所地が新潟市中央区で、調停の申立てをする相続人も新潟市中央区在住であっても、相手方が新潟県長岡市在住であれば新潟家庭裁判所長岡支部が管轄となりますので、同裁判所に申立をすることになります。
本来、遺産分割調停は相続人全員が裁判所に出廷することが望ましいのですが、相続人が多数人いる場合、全員が参加するということは現実的には難しいことが多いです。この場合、相続人間で遺産分割の内容がまとまるようであれば、裁判所が「調停に代わる審判」という方法で遺産分割を成立させることもあります。

⑤相続財産の名義変更など

遺産分割が成立したら、その遺産分割協議書などをもとに、不動産の名義変更や預貯金の解約等を行います。
これにて相続手続きは完了となります。

 

当事務所の主な解決事例

当事務所は相続人が多数いる遺産分割などを解決した実績があります。主な解決事例をご紹介します。以下に掲載した以外にも多数の解決実績がございます。
※リンク貼る
【解決事例】遺産分割協議 多数の相続人と協議をした事例

【解決事例】遺産分割協議 多数の相続人と協議をした事例


【解決事例】遺産分割  長年にわって解決されなかった数次相続を解決した事案

遺産分割  長年にわって解決されなかった数次相続を解決した事案

【解決事例】遺産分割調停-弁護士が調停を申し立て、多数の県外在住の相続人と遺産分割調停が成立した事案

遺産分割調停-弁護士が調停を申し立て、多数の県外在住の相続人と遺産分割調停が成立した事案

弁護士に依頼するメリット

相続人が多数人いる場合に、弁護士に手続きを依頼する主なメリットをご紹介します。

 

①面倒な手続きを全て任せることができる

相続人が多数いる場合、相続人調査だけでも大変な労力と負担が生じます。役所の営業時間内に窓口で取得する場合、平日にお仕事を休んで窓口で長時間待たされる場合もあります。
他の相続人とどのような協議をするか等についても弁護士と相談できますから、安心して進めることができます。

②他の相続人とかかわらなくてよい

相続人の中に感情的な対立や確執がある場合でも、弁護士が窓口になりますから、依頼者の方は相手方と直接顔を合わせたり、電話で話をする必要はありません。すべて弁護士に任せることができますので、心理的な負担がかなり軽減されます。

③法律的に正確な処理をしてもらえる

相続人が多数いる場合は特に法律関係が複雑になる場合もあります。また、預貯金等を解約する場合でも、金融機関によって必要な書類などが異なります。一つの書類に誤りがあると、せっかく成立した遺産分割をやり直しが必要になったり、また多数人の相続人とやりとりが必要となります。弁護士に依頼をして、正確な処理をしてもらうことが重要です。

 

弁護士に依頼した場合の費用

弁護士法人美咲総合法律税務事務所が定める遺産分割の弁護士費用は以下のとおりです。

着手金 報酬金 その他
22万円 取得した財産額の11%

(最低報酬額55万円)

実費など

※ただし、相続人が多数人いる場合には、着手金、報酬金等を増額する場合がございます。ご相談の際に弁護士が費用をご説明いたしますのでご安心ください。

弁護士法人美咲総合法律税務事務所にお気軽にご相談ください

弁護士法人美咲総合法律税務事務所は相続人が多数人いる遺産分割を解決した実績があります。初回相談は無料です。争いやトラブルになっていなくても、相続発生直後からご相談を対応しておりますから、お気軽にお問合せください。

 

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