不動産の共有分割について
共有不動産について
土地や建物の持分を2人が1/2ずつ保有しているような状態があります。このような複数人が一つの不動産を共同で所有している状態を「共有」といいます。「共同名義」などと呼ぶこともありますが、法律上は共有という言い方をします。
不動産を共有のままにしておくと、様々な不都合が生じる場合があります。そこで、この記事では共有の状態から起きる不都合やその解決方法等について弁護士が解説します。
不動産が共有になる主な事情は?
不動産がなぜ共有になるのでしょうか。主な理由として以下の事情が考えられます。
【不動産が共有になる主な事情】
①相続で取得した場合 ②共同で不動産を購入した場合 |
①相続で取得した場合について
例えば、不動産の名義人である父が亡くなったときに、相続人が母、長男、長女の3名である場合、母が1/2、長男と長女が各1/4ずつの持分を有するという共有の状態になります。
これは相続の発生、つまり上記の例でいうと父が亡くなった瞬間に共有になります。不動産の名義変更(所有権移転登記といいます)をしなくとも、法律上は共有になっています。
②共同で不動産を購入した場合
一緒にお金を出し合って不動産を購入する場合、その負担した金額の割合によって、不動産の持分を定める場合があります。
また、住宅を夫婦で購入される場合、住宅ローンを組む関係で、夫婦双方が持分を持つ場合があります。例えば、夫が9/10、妻が1/10として、妻の収入を住宅ローンの審査にあげる方法です。
共有のデメリットは?
共有不動産の主なデメリットは以下の3点です。
①売却等のために全員の同意が必要になる
②費用負担でトラブルになりやすい ③放置すると共有者が増加する、連絡が取れなくなる等の事態が生ずる |
①売却等のために全員の同意が必要になる
共有不動産について、以下のような場合は共有者全員の同意が必要です。
【全員の同意が必要な場合】
・不動産全体の売却 ・不動産全体について賃貸借契約を締結すること(※一部例外あり) ・大規模修繕 ・建物の建て替え ・土地の造成 ・不動産に抵当権を設定すること |
このように、不動産について重要な変更を加えようとする場合は、共有者全員の同意が必要となります。共有者全員の関係性に問題がなければ特段トラブルになることはないかもしれませんが、例えば共有者の間で仲が悪い等の事情があると、売却等ができなくなってしまう恐れがあります。
②費用負担でトラブルになりやすい
共有不動産の維持管理をするのに費用が発生した場合、その持分割合に応じて負担することとされています。例えば、固定資産税や建物の修繕費等が挙げられます。
実際には、共有者の誰かが一旦負担して、後から他の共有者に請求をするという形をとらざるを得ないことがあります。
共有者の関係が悪い場合など、この費用負担を円滑に清算ができない等の事態が生じる場合があり、トラブルに発展する場合があります。
③放置すると共有者が増加する、連絡が取れなくなる等の事態が生ずる
共有不動産は特に支障がない場合に、あえて共有状態を解消しようとしない場合が大半です。時間が経過してしまい、共有者が死亡してその共有持分権が相続人に相続されてどんどんと共有者が増加してしまう場合があります。
また、共有者が高齢になり、認知症等により判断能力が低下してしまい、共有状態を簡単に処理できなくなってしまうこともあります。
場合によっては、共有者が行方不明等により連絡が取れない、どこに住んでいるかわからないということも、実務的には意外と目にする事態です。
特に相続により共有不動産となった場合、自身が持分を保有していることに気づかない場合があります。亡くなった方が不動産を保有しているとは知らなかった場合、疎遠の親族が死亡したときに自分が相続人であると知らなかった場合などが考えられます。このような状態が続くと、所有者が誰なのかわからないという事態にもつながりかねないのです。
また、近年では、共有持分を買い取っていきなり共有物分割請求をしてくる業者が増加しています。なかには、高額の金銭を要求してくる業者もいます。共有持分がこういった業者の手に渡る前に対応することが重要です。
不動産の共有状態を解消する方法は?
それでは、このような不都合な共有状態を解消するにはどのようにしたらよいのでしょうか。
共有者どうしで話し合う
まず共有者で話し合うことが考えられます。
例えば、長男が1/2ずつ保有している場合に、長男が全ての持分を取得して、二男に対してその代わりお金を支払うなどの方法が考えられます。不動産の状況によっては、分筆することも考えられます。
法律上「このようにしなさい」という決まりはありませんから、当事者間で柔軟に決めることができるのがメリットです。
調停をする
当事者間での話し合いがうまくいかない場合は、裁判所の手続きを使うことが考えられます。
「調停」という話し合いの手続きを使うこともあります。調停委員という第三者が間に入り、当事者間の話を整理して進めていくため、合意を形成しやすいといえます。
感情的な対立があったりする場合は、直接当事者間で話し合うよりも、第三者を交えた方がよいでしょう。
訴訟をする
話し合いでの解決が見込めない場合は、訴訟(裁判)を選択する場合もあります。
共有物分割請求訴訟といいます。共有物分割請求訴訟は単独ですることができ、他の共有者の同意は不要です。裁判所に対して、共有不動産の分割方法を決めてもらうことができます。
共有物分割請求をする場合、法律では以下の方法が定められています。
①現物分割
②代償分割 ③競売 |
①現物分割
共有物の現物を分割する方法です。文字どおり、共有不動産を分けて、それぞれ単独所有の状態にします。建物の場合は物理的に分割ができませんが、土地の場合は分けることができる場合があります。
裁判所が、持分割合や現在の使用状況、不動産の状況等を考慮して、分割方法を命じることができます。
②代金分割
代金分割は、当該共有不動産を売却して金銭に換え、その金銭を共有持分に応じて分ける方法です。
これには二つの方法があり、共同で売却をしてその代金を分ける方法と裁判所による競売にする方法があります。
なお、裁判所による競売はあくまで補充的なものと位置付けられており、共有者の中に全面的価格賠償を望む者がいる場合は、特段の事情を審理判断することなく、競売による分割を命ずることできません。
③代償分割(価格賠償)
共有者と特定の共有者に帰属させ、その取得した者から他の者に対して価格を賠償させるという方法です。共有不動産を共有者のうち1人または数人の所有として、これらの者が他の者に対して持分の価格を賠償することを全面的価格賠償といいます。
もっとも、判例では、全面的価格賠償を命じるには「特段の事情」が必要とされています。少し難しい内容ですが、重要な点なので一部引用します。
【最高裁判所平成8年10月31日判決の考え方】
①当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められること *「相当」かどうかの判断要素 当該共有物の性質及び形状、共有関係の発生原因、共有者の数持分の割合、共有者の利用状況及び分割された場合の経済価値、分割方法について共有者の希望及び合理性の有無等 ②当該共有物の価格が適正に評価されること ③当該共有物を取得する者に支払能力があること ④他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないこと |
相続の場合に共有物分割請求はできますか?
相続で共有状態となった場合、基本的にはまず遺産分割協議で話し合いをしなければなりません。遺産分割協議を経ずに、いきなり後述する共有物分割請求訴訟という裁判を起こしても、裁判所はこれを受け付けてくれません。
もっとも、相続が開始してから10年を経過している場合は、例外として、遺産分割を経ることなく、共有物分割請求をすることができます。
ただし、これは、共有持分が相続財産に含まれている場合に適用される規定です。
例えば、土地をAとBが共有しており、Aが死亡し、CとDがAを相続し、その結果、BCDの三名で共有するに至った場合です。
Fが死亡し、その単独所有していた土地をGとHが共有するに至った場合、Fの死後10年が経過しても、いきなり共有物分割請求することはできず、まずは遺産分割協議をしなければなりません。
美咲法律税務事務所がお役に立てること
①共有不動産を早期に解消する方法をご提案
共有不動産は様々な面で不都合が生じますから、共有者間でトラブルが生じやすいといえます。弁護士が共有物分割請求やその具体的な方法等をご提案いたします。
②遺産分割、共有物分割請求の対応を任せることができる
遺産分割や共有物分割請求の対応は専門的な知識や経験が必要です。ご自身でやろうとしても、相当な負担とストレスがかかってしまいます。このような手続きは弁護士に任せて、適切な解決を目指しましょう。
③共有不動産にしないための予防策をご提案
特に相続については、ご自身の不動産が共有となってしまうと、相続人間でトラブルに発生しやすいです。ご自宅の土地建物や賃貸物件についても、共有になることを予防するに越したことはありません。具体的には、遺言書の作成や信託契約、生前贈与など様々なメニューがございます。このうち、あなたにとって最善の対策方法をご提案いたします。
まずは弁護士法人美咲総合法律税務事務所にお気軽にお問い合わせください。