被相続人の預貯金を遺産分割前に使用できますか?
質 問
昨日、父が死亡しました。父名義の預金がかなりあり、通帳と印鑑は私が保管しているので、葬儀費用などに充てるため下ろしたいと思いますが、大丈夫でしょうか。
回 答
亡くなられたお父さん名義の預金ですので、通帳と印鑑があったとしても、単独での払い戻しははできません。
お父さんが亡くなられたことを銀行が知っていれば、払い戻しは拒否されることになります。
たまたま銀行が死亡の事実を知らなければ払い戻しに応ずることも事実上あり得ますが、このような払い戻しを行うことは法的には問題がありますし、他に相続人がいると後々トラブルになることも考えられます。
従前は、預貯金債権は可分債権であるため、法定相続分に応じて当然に分割されると考えられていました。
例えば100万円の残高がある預貯金口座があって、相続人が被相続人の子2人だとすると、1人あたり50万円ずつその預貯金債権を取得するということです。そのため、遺産分割協議をして誰がどれくらいの預貯金を取得するのかということを取り決めしなくても、銀行に対して請求することが可能でした(銀行が応じるかどうかは別問題としてありますが)。
しかし、近時、最高裁判所は、「共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。」と述べ、従前の考え方を変更し、預貯金債権も遺産分割の対象であると判断しました(最決平成28年12月29日裁判所時報1666号2頁)
参考:http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/354/086354_hanrei.pdf
ただ、各金融機関によりその対応は若干異なることが予想されますので、必要書類等についてはお近くの支店等にお問い合わせください。
どのようにしたらよいのでしょうか?
時間がかかりそうですね・・・
あらかじめ対策を講じることはできないのでしょうか?
(生前贈与、遺言書および遺言執行など)