HOME > よくあるQ&A > 相続放棄について > 相続財産から葬儀費用を支払っても相続放棄はできるのか?

相続財産から葬儀費用を支払っても相続放棄はできるのか?

質 問

私の父は事業を営んでいて、会社の代表者として連帯保証人になっている債務がかなりの額にのぼります。その父が余命幾ばくもないと医師に告げられています。私は普通の会社員で平均的な収入しかありません。もし父の債務を相続するとなると、生活できなくなってしまいます。そのため、相続放棄を考えています。
とはいえ、お通夜とお葬式はきちんと行いたいと考えているのですが、この葬儀費用を遺産から支出することは問題ないのでしょうか。

回 答

債務を多額に相続しなければならない場合、相続放棄という手続きをとることが考えられます。

ただ、この相続放棄はどんなときであってもできるわけではありません。民法には、「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき」は相続を単純承認したとみなされ、相続放棄が出来なくなってしまいます。

葬儀費用として遺産を使用すると、単純承認したとみられて、マイナスの遺産である債務も相続しなければならない、ということでしょうか。
相談者
相談者
美咲総合法律税務事務所
美咲総合法律税務事務所
そのとおりです。
質問のケースは、相続放棄を考えているけど相続財産の一部を使いたい、という内容ですね。

そうすると、被相続人の相続財産の一部を葬儀費用に充てることが、法律上の「処分」にあたるのかどうかが問題となります。

こういった扱いが問題となった裁判例では、「社会的にみて不相当に高額なものとも断定できない」(大阪高等裁判所平成14年7月3日決定)などと判断されていたり、「遺族トシテ当然営マサルヘカラサル葬式費用ニ相続財産ヲ支出スルカ如キハ道義上必然ノ所為」であると述べ、やむを得ない支出だから「処分」にあたらないとしている裁判例(東京控判昭和11年9月21日)もあります。

教科書的には、社会的に相当だとか、身分相応の支出であれば、「処分」にあたらないという回答にはなります。

 

葬儀費用として遺産を使用すると、単純承認したとみられて、マイナスの遺産である債務も相続しなければならない、ということでしょうか。
相談者
相談者
美咲総合法律税務事務所
美咲総合法律税務事務所
このような問題は個別具体的に判断せざるを得ません。
「100万円だから大丈夫」だとか「会社の経営者なら400万円くらい大丈夫」といった回答はできない性質の問題です。
では、今回のケースはどこから葬儀費用を捻出すれば良いのでしょうか。
相談者
相談者
美咲総合法律税務事務所
美咲総合法律税務事務所
質問のようなケースに直面した場合、親族の間で、相続財産を使わない形で葬儀費用を負担できないかを協議することが重要となるでしょう。

関連記事はこちら