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新潟市での「本人通知制度」の開始 

「本人通知制度」とは

先日,新潟市の市報に目を通していたところ,平成29年3月1日から,新潟市で「本人通知制度」を開始するという記事を目にしました。

「本人通知制度」とは,市町村が,住民票の写しや戸籍謄本などを,代理人や第三者に交付した場合に,あらかじめ登録している本人に対し,住民票の写しや戸籍謄本を交付した事実を知らせる制度です。

制度の目的は,第三者が不正に住民票や戸籍謄本を取得することを防止することや,不正請求の抑止にあるようです。

つまり,本人通知制度によって,第三者が不正に住民票や戸籍謄本を取得した場合には,早期に不正請求を発見することができ,個人情報の不正利用防止や事実関係の早期究明が可能になります。

また,本人通知制度があることにより,不正が発覚する可能性が高まることから,不正請求を抑止する効果も期待できるとのことです。

「本人通知制度」の利用方法

「本人通知制度」は,あらかじめ登録が必要です。
したがって,本人通知制度を希望する方は,住所や本籍のある市町村に登録をする必要があります。

「本人通知制度」は,各市町村が,権利保護のために独自に要綱等を定めて実施するものであり,各市町村によって取り扱いが異なる可能性があるそうです。

具体的な登録方法や手続きについては,対象の市町村のホームページなどでお確かめください。

ちなみに,新潟市の本人通知制度については,新潟市のホームページに詳しく記載されていますので,登録をご検討されている方は,ご覧いただき,必要書類などをご確認されてはいかがでしょう。

「本人通知制度」への様々な意見

私たち弁護士は,職務上第三者の住民票や戸籍謄本を取得することが許されており,依頼者の権利を最大限に主張するために,相手方当事者の住民票や戸籍謄本を取得することがよくあります。

「本人通知制度」が導入されることにより,弁護士が相手方当事者の住民票や戸籍謄本を取得する際にも,本人にその通知がなされることになりますが,これには,以下のような問題点が存在すると指摘されています。

まず,問題となり得る場面として挙げられるのが,強制執行や保全処分の場面です。

すなわち,弁護士が依頼を受け,相手方の財産に対して差押などの強制執行を検討するために相手方の住民票を取得すると,「本人通知制度」により,それが相手方に通知されることになります。

すると,相手方としては,何者かが自己に対して強制執行をしようとしていることを察知し,強制執行に対する対策をとることができることになってしまいます。

具体的には,自分の銀行預金口座にある預金をすべて引き出し,別の銀行に移すなどといったことが可能になってしまいます。

このように「本人通知制度」が導入されることによって,法が定めた強制執行や保全処分などの機能が妨げられてしまうことが懸念されています。

次に,問題となり得る場面として挙げられるのが,遺言作成の場面です。

依頼者が遺言を作成したいと考えている場合に,弁護士又は本人が,相続人らの戸籍を取得することがあります。

しかし,「本人通知制度」により,誰が遺言書を作成しようとしているかが,相続人らに分かってしまうことがあります。

遺言をする人の中には,遺言書作成を秘密にしておきたいという人も少なくないため,場合によっては,遺言者の生前に,遺言者と相続人との間で摩擦を起こしてしまう可能性が指摘されています。

「本人通知制度」に対する所感

権利保護の重要性が唱えられる昨今,住民票等の不正請求の抑止も重要な目的です。

しかし,他方で,強制執行や保全処分の効果が妨げられ,正当な権利行使が妨げられることも避けなければなりません。

個人的には,今回の新潟市での「本人通知制度」の導入をきっかけに,正当な権利の行使とは何かについて,改めて考えさせられる機会となりました。

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