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【解決事例】所在等不明共有者持分の取得決定が認められた事案

事案の概要

元々、土地と建物とが父と次男の共有でした。父の死亡により長男が父の共有持分を取得しました。
その後、次男が死亡したものの、借金などがあったため、相続人である長男が相続放棄をしました。
その後はしばらく自宅は空き家のまま放置していたのですが、固定資産税の負担などから、自宅を処理することにしました。

しかし、登記簿上は長男と亡次男の共有になっており、亡次男には相続人が不存在の状態であるため、簡単に処分することができません。少なくとも、亡次男の持分を長男が取得するなどの対応が必要です。
このような状態で当事務所にご依頼されました。

弁護士の活動

本件は令和3年の民法改正で新設された「 所在等不明共有者持分の取得決定」という制
度が使えると考えました。

同制度は民法 262 条の2に定められています。

※参考条文 民法262条の2
(所在等不明共有者の持分の取得)
第二百六十二条の二 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において 所在等不明共有者」という。)の持分を取得させる旨の裁判をすることができる。
この場合において、請求をした共有者が二人以上あるときは、請求をした各共有者に、所在等不明共有者の持分を、請求をした各共有者の持分の割合で按分してそれぞれ取得させる。

この制度は「 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき」と定められていますが、すでに共有持分権者が死亡し、相続人が不存在の場合も含まれます。

まず登記や戸籍等を収集し、本件で共有持分権者に相続人がいないことを調査しました。
その上で、依頼者の方から事情をお伺いし、裁判所に申し立てをするための申立書などを作成しました。

並行して、複数の不動産業者に対して不動産の査定を行なってもらい、その査定書をもとに、本件物件の価値(共有持分に相当する価値)を算定しました。

裁判所に申し立てを行い、こちらが想定する金額での取得決定を得ることができました。同決定に基づき、依頼者の代わりに法務局にて供託を行い、それを裁判所に提出しました。

裁判所から取得した書面などを司法書士に提供し、所有権移転登記手続きを完了しました。

担当弁護士の所感

依頼者の方から空き家になっていた「 負動産」が無事に売却ができるようになってよかったとお喜びいただきました。

「所在等不明共有者持分の取得決定」の事案は新潟地方裁判所でもまだ事案の蓄積が少なく、情報も少ない状況でした。

無事に滞りなく共有持分を取得することができ、大変よかったです。(担当弁護士 五十嵐勇)

掲載日2025年4月7日

 

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五十嵐 勇

五十嵐 勇

新潟県加茂市出身 新潟県立三条高校 卒業 新潟大学法学部法学科 卒業 九州大学法科大学院 修了 弁護士登録(66期)

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