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【弁護士コラム】所有者不明の土地を買いたい!所有者不明土地(建物)管理命令制度を解説

「隣の土地が空き地になっているから購入したいが、所有者が誰なのかわからない」。

このような場合「所有者不明土地(建物)管理命令制度」を利用することで、円滑に不動産を取得できるかもしれません。この記事では所有者不明土地(建物)管理命令制度」について弁護士が解説をします。

所有者不明土地(建物)とは

所有者不明土地とは、以下の場合をいいます。

①不動産登記簿等を参照しても、所有者が直ちに判明しない土地

②所有者が判明しても、所有者に連絡がつかない土地

所有者不明の場合、土地建物が適切に管理されないことから周辺の環境を悪化させていたり、真の所有者の探索に手間と時間がかかるため公共事業等に支障が生じたりしているため、社会的な問題となっていました。

所有者不明土地(建物)がなぜ発生するかというと、登記簿上の所有者が死亡し相続が発生しても、相続人が存在しなかった、相続人が存在する場合でも当該不動産の存在を知らなかった、相続人の間で遺産分割がされなかった、遺産分割が行われてもそれに基づく所有権移転登記が行われなかった等の様々事情により、真の所有者に登記名義が変更されなかったためです。

所有者不明土地(建物)管理命令制度が導入された背景

従前は、所有者不明土地(建物)を買い取りたい場合には、「不在者財産管理人」や「相続財産管理人(相続財産清算人)」という制度を利用していました。「不在者財産管理人」は所有者の行方がわからないという場合に、「相続財産管理人(相続財産清算人)」は所有者の相続人全員が相続放棄する等して相続人が不存在になった場合に、それぞれ裁判所から管理人を選任してもらうという手続きです。この管理人から不動産を買い取る、ということを行ってきました。

しかし、「不在者財産管理人」、「相続財産清算人」は、「不動産」ではなく「人」にスポットを当てた制度であることから、当該所有者や被相続人の財産(資産、負債)を調査しなければならず、不在者財産管理人や相続財産管理人に選任される弁護士への報酬に充てるための予納金も高額になるなど、非常に使い勝手が悪いものでした。

特に、法改正前は、売却できない山林や農地等が財産に含まれていると、管理業務を終わらせることができないため、そもそも管理人になる者がおらず、申立すらできないという難点がありました。

このような難点等を克服するため、「人」ではなく、個々の「不動産」に特化して管理できるような制度として「所有者不明土地(建物)管理命令」制度等が創設されました。

所有者不明土地管理命令制度を利用する場合の流れ

所有者不明土地を買い取り希望の方が所有者不明土地管理命令制度を利用する場合の流れを説明します。

(1)土地(建物)の所有者の調査

まず対象となる土地(建物)の所有者を調査しなければなりません。

なぜなら「所有者不明」といえるためには「相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない」(所有者不明土地法第2条1項)とされており、必要な調査・探索を尽くしたかどうかが裁判所から審理されるためです。どのような場合に「相当な努力」を払ったといえるかはケースバイケースの判断となります。

不動産の登記簿、住民票等の取得、住所地の調査、死亡している場合は戸籍謄本等の取得等を行う必要があります。

(2)裁判所への申立て

必要な書類を取得したら、申立書等を作成した上で、対象地の所在地を管轄する地方裁判所に申立を行います。

例えば、新潟市中央区にある土地について所有者不明土地管理命令制度を利用する場合は、新潟地方裁判所に対して申立を行います。

裁判所は管理人の報酬額等を考慮した予納金の納付をさせる場合があります。

(3)公告

裁判所は、1か月以上の期間を定めて対象地の所有者または共有持分権者において異議があるときは届出をすべきこと等を定めて公告を行います。

(4)裁判所による所有者不明土地管理人の選任

公告された期間内に届出がなく、管理の必要性がある場合には、裁判所は所有者不明土地管理人による管理を命じる処分を発します。

この管理人には、弁護士、司法書士等が選任されることが予定されています。

所有者不明土地管理人は、対象財産の管理・処分を行う権限を有します。

所有者不明土地管理人が選任されると、当該管理者の情報が対象不動産に登記されます。

なお、土地と建物は別の取り扱いがなされているため、所有者不明土地管理命令が出されたとしても、同土地上に存在する建物にはその効力が及ばないため、これとは別に所有者不明建物管理命令を申立てなければなりません。

(5)売買契約の締結と所有権移転登記手続き

選任された所有者不明土地管理人との間で売買契約を締結します。この売買契約を行うためには、裁判所の許可が必要です。裁判所の許可を得ずに行った売買契約は無効です。

裁判所がどのような場合に許可を出すかはケースバイケースですが、不動産の売買価格についても、それが相当かどうかは審査の対象となります。固定資産評価額が一つの参考になりますが、都市部や市街地等では不動産会社の査定書等を用いる場合もあります。

売買契約を締結したら、所有権移転登記手続きを行います。

(6)選任の取消

対象不動産の売却が終わったら、当該管理人を維持する必要がなくなりますので、裁判所はその旨の広告を行った上で、管理人の選任を取り消します。管理命令の登記も抹消します。

管理人は裁判所が定めた報酬を受領することができます。

どういった人が所有者不明土地管理命令制度を利用できるの?

法律上「利害関係人」とされています。

どのような者が「利害関係人」に該当するかどうかについては、

  • 当該土地が適切に管理されないために不利益を被るおそれがある隣接地所有者
  • 一部の共有者が不明な場合の他の共有者
  • その土地を取得してより適切な管理をしようとする公共事業の実施者
  • 民間の買受希望者

等が該当すると想定されています。

出典:民法・不動産登記法部会資料

弁護士法人美咲総合法律税務事務所に依頼した場合の費用

弁護士法人美咲総合法律税務事務所では、ご依頼者様に代わって所有者の調査から所有者不明土地管理命令申立てをサポートいたします。

内容 費用 備考
所有者不明土地(建物)管理命令の申立て 330,000円 ・所有者の調査

・必要書類の取得

・申立書類の作成

・裁判所に代理人として提出

・管理人との売買契約サポート

上記の費用のほか、裁判所に納付する手数や郵券、予納金などが発生します。

所有者不明の土地(建物)についてご相談がある方は、初回相談無料ですので、どうぞお気軽にお問合せください。

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