相続人の中に行方不明者がいる場合の遺産分割協議(失踪宣告について)
質 問
父が亡くなり、遺産分割協議をしたいのですが、相続人の中に行方不明になっている兄がいるんです。この行方不明になっている兄以外の相続人で遺産分割協議を進めてもいいのでしょうか。
回 答
それはダメですね。遺産分割協議は相続人全員で行う必要があるからです(詳しくはこちらをご覧ください)。
美咲総合法律税務事務所
お兄さんは何年前から行方不明になっているのですか。
10年以上経つでしょうか。
相談者
美咲総合法律税務事務所
何か行方不明になるきっかけはあったのでしょうか。
借金があったようですが・・特に理由はわかりません。
相談者
美咲総合法律税務事務所
行方不明の方がいる場合に遺産分割協議を法律上有効に行うための方法は、
①失踪宣告の申立て、②不在者財産管理人の選任申立てが考えられます。
まず、①失踪宣告について説明しますね。民法30条以下に規定があります。
①失踪宣告の申立て、②不在者財産管理人の選任申立てが考えられます。
まず、①失踪宣告について説明しますね。民法30条以下に規定があります。
民法 第30条 不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。 2 戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないときも、前項と同様とする。 |
民法 第31条 前条第一項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第二項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。 |
美咲総合法律税務事務所
失踪宣告とは、一定期間生死が不明の時に、特別の利害関係がある人からの申立てを受けて、家庭裁判所が、その失踪している人を「死亡したものとみなす」という判断をするもので、とても強い効力がある手続です。
ご相談の遺産分割協議との関係で言うと、その行方不明の方が「死亡した」とみなされているわけですから、相続人から外れることになり、この方が遺産分割手続きに参加せずとも有効に遺産分割協議を成立することができるわけです。
ただ、この行方不明の方に配偶者や子がいる場合はこの方々が相続人となる場合がありますので、ご注意ください。
ご相談の遺産分割協議との関係で言うと、その行方不明の方が「死亡した」とみなされているわけですから、相続人から外れることになり、この方が遺産分割手続きに参加せずとも有効に遺産分割協議を成立することができるわけです。
ただ、この行方不明の方に配偶者や子がいる場合はこの方々が相続人となる場合がありますので、ご注意ください。
兄は独身ですので、妻や子はいません。
美咲総合法律税務事務所
わかりました。失踪宣告には2種類ありまして、普通失踪(第1項)と特別失踪(第2項)があります。ご相談のケースですと、戦争や船舶の事故とは関係がなさそうなので、普通失踪が考えられます。
どういった手続が必要なのでしょうか。
美咲総合法律税務事務所
相続人のどなたかから、不在者が最後に住んでいた場所等を管轄する家庭裁判所に申立てをします。戸籍謄本や失踪したことを明らかにする資料を添付する必要があります。申立後は家庭裁判所の担当者が調査を行い、官報や裁判所の掲示板で催告を行います。この期間内に届出などがなければ、裁判所が失踪宣告をします。
失踪宣告はその人を「死亡したものとみなす」という強い効力がある手続ですから、手続にはそれなりに時間がかかりますね。
失踪宣告はその人を「死亡したものとみなす」という強い効力がある手続ですから、手続にはそれなりに時間がかかりますね。
ちょっと事情があって、そこまで時間はかけることができません・・。
美咲総合法律税務事務所
わかりました。それでは二つ目の方法である②不在者財産管理人の説明をしますね(続きはこちらをご覧ください)。