HOME > よくあるQ&A > 相続放棄について > 相続放棄と相続分の放棄の違いについて

相続放棄と相続分の放棄の違いについて

質 問

先日、父が亡くなりました。相続人は母、私、弟の3人になります。
父には負債はなく、不動産や預金などの財産があるのですが、私は既に家を出ているので、財産は母と弟で話し合って相続する者を決めてもらいたいと思っています。
このような場合、家庭裁判所で相続放棄の手続きを行わなければならないのでしょうか。

回 答

遺産の相続を希望しない場合、相続放棄の手続きを行うのも一つの方法ですが、遺産に対する自分の持分を主張する権利(「共有持分権」といいます。)を放棄する「相続分の放棄」を行うという方法もあります。

「相続分の放棄」はどのような方法で行うのでしょうか?
相談者
相談者
美咲総合法律税務事務所
美咲総合法律税務事務所
特に方式はないので、口頭でも行うことが可能です。ただ、実務上は、「相続分の放棄」が本人の意思であることを明確化するために、相続分の放棄を行う者の署名と実印で押印をして書面化するのが一般的です。
相続放棄と「相続分の放棄」とでは何か違いが生じるのでしょうか?
相談者
相談者
美咲総合法律税務事務所
美咲総合法律税務事務所
相続放棄をした相続人は、その相続に関しては最初から相続人ではなかった扱いになりますので、亡くなった方の負債も負うことはありません。
しかし、「相続分の放棄」は、相続人としての地位は残るため、不動産や預貯金などのプラスの財産は受け取れませんが、亡くなった方の負債は負うこととなります。
ただし、今回はお父さんには負債がないということなので、この点はあまり気にしなくてもよいかもしれません。
他に違いはありますか?
相談者
相談者
美咲総合法律税務事務所
美咲総合法律税務事務所
それぞれの方法を行った後の他の相続人の相続分に違いが生じます。
今回のケースで相続放棄した場合には、あなたははじめから相続人ではなかったとみなされますので、相続人は配偶者1人、子供1人となり、相続分はお母さんが2分の1、弟さんが2分の1となります。
美咲総合法律税務事務所
美咲総合法律税務事務所
これに対して、「相続分の放棄」をした場合には、あなたの相続分が、他の相続人に相続分の比率に応じて配分されることになります。
今回のケースでいえば、あなたが相続分の放棄を行う前のお母さんの相続分は2分の1、弟さんは4分の1で、母:弟=2:1の比率となるので、あなたの相続分である4分の1の相続分を、お母さんが2、弟さんが1の割合で配分されることになります。そうすると、お母さんの相続分は、(2/3×1/4)+1/2で3分の2、弟さんが、(1/3×1/4)+1/4で3分の1となります。
(相続の放棄の効力)
民法第939条 相続の放棄をした者は,その相続に関しては,初めから相続人とならなかったものとみなす。

関連記事はこちら